プレゼントは健康

義母さんから「プレゼントおくるね!」と言われていたブツが届いた。

旦那の誕生日だったので、旦那宛だろう。風呂に入っている間に届いたので、次女を洗いながらチャイムの音とドタバタ玄関に走る音、長女の「うわ!!おっきいやつだ!!」という歓声を聞いた。でかいのか。よかったな。でっかいプレゼントは嬉しいもんなあ。

風呂から上がると旦那が箱から顔を上げて「これかかし宛だわ」と半笑いで言った。いや旦那の誕生日プレゼントだって言ってたでしょ、と箱を見た。

 

 

体重体組成計 KRD-703T カラダスキャン

https://store.healthcare.omron.co.jp/lp/krd-703t/

 

 

 

私が使うことを想定してるな??????

めちゃくちゃ良い体重計。体脂肪は勿論腕や足など部位ごとの筋力も測れる。ズボラデブにはえげつない測定機器である。身体の真実が暴かれるやつ。ぎょええー!前にもどっかで書いたが義母さんは健康シャキシャキ人間なのである。私にも健康になってほしいのだ。ありがてえな。しかしこわい。これに乗ったら色々わかってしまう。私の身体の真実が。

「早く乗りなよ、いまさら数字が凄くても驚かないから」

後ろでわくわくする旦那に軽く舌打ちしたくなったが子供の手前我慢した。代わりに「君の誕生日なんだから君も乗れよ絶対だぞ」とめちゃくちゃ低い声が出た。

 

凄く良い測定機なので(語彙が無い)、アプリ連携ができる。アプリの設定を色々しながら「うわ体年齢とかある」と改めて計測項目の多さにびびった。

8種類もある。

体重、体脂肪率、皮下脂肪率、骨格筋力、内臓脂肪レベル、基礎代謝、体年齢、BMI

丸裸じゃん………………

乗っただけで個人特定できちゃうレベル……おっそろしい。今まで目を背けてきた真実が数字で突きつけられる。これ大丈夫だよね?マイナンバーカードとかに登録されない?平気?旦那のワクワクが盛り上がって後ろで動画まで撮り始めた。完全にバンジージャンプする人を見学する人になりやがって。野次馬根性ここに極まれり。

旦那のワクワクが長女と次女に移って体側計の周りで踊りだした。「ママはやく乗ってよお〜!まちきれないよ〜!」今度「まちきれない」の活用法を辞書で調べてくれ。まちがって………はいないのか。くっそぉー!しばらく足をうろうろ体側計の上で彷徨わせてから、盆踊りと阿波踊りが一緒になった次女に覚悟を決めて、乗った。

 

「体年齢57歳???!!!!」

(※他の数字は私の現実直視力が足りないためご容赦ください※)

 

ごじゅ……???えっ仮にも30代なんですけど………えっ約20も……そんな……うそ………えっ????? いや見間違い……57って書いてある………

悲鳴を上げた私の後ろで旦那が笑うのをこらえながら動画を撮っている。おいカメラ止めろ。長女は「?ママ3◯歳でしょ」とさらにトドメを刺すと、「この箱工作につかう」と興味を他に移してさっさと行ってしまった。残酷。無邪気って残酷。

「こういうのって不健康な人が乗ったほうが面白いよね」と旦那が言うのに、私は「ハァ〜〜〜???💢💢」と反射で振り返った。そういうやつが炎上コンテンツを作るんだぞ。

「誕生日プレゼントなんだから乗りなさいよ!!」逆ギレもいいところの謎ギレで迫る。アプリの設定をめんどくさがる旦那に「説明書読みなよ!💢」と追加でキレて次女と一緒に乗るまでを監視した。逃さねえぞ。お前も真実を晒せ。気分は山賊である。出すもの出せ。

ピピッという音と一緒にアプリを見ていた旦那が「僕は健康だからつまんないな」と言いながらにやにや画面を見せてきた。

 

「体年齢28歳??!!!?!?!」

(※他の数字は私の嫉妬が爆発しかねないのでご容赦ください※)

 

仮にも30代だろ……??10歳近く若いってなに…?!大体同じもの食べてるしなんならポテチとかチョコとか私より旦那のが食べてるのにどういうこといや私がズボラだからなんですけど!!!!!!デブだからなんですけど!!!

「いや〜健康つれえわ〜」と健康マウントを取ってくる旦那にひったくったスマホを反しながら歯噛みした。

「私のが年上なんだから大事にいたわれよな!!!28歳!!!」

「労られたいの…?」

「57歳なめんなよ!!歩くだけで息切れすんだから!!」

「30代になりなよ」

「うるさい!正論をいうな!」

 

うるさい、正論を言うな!正論で痩せてたらデブにはならんのじゃ!二度言いながらダイエットを決意する。とりあえず運動か。食べる量はなんとか減らしつつあるし。しかし運動が続いてたらデブにはなってないわけで。というか今すぐこの勝ち誇った顔に何か返したい。くっそ〜〜!この健康マウント男に何か勝ってないのか。

現実から目をそらすべくアプリをスクロールして、見つけた項目にドヤ顔をした。

「でも基礎代謝は私のほうが高いぞ!」

「体重あるほうが基礎代謝が高いんじゃない?」

完敗したので不貞寝した。

 

 

 

後日、義母さんからは「家族みんなで健康になってね!」とありがたいお言葉を頂戴したので「がんばります…!」と返した。

笑い話になるかとおもって実母に言ったら「57歳ってあんた…私に近いじゃん…」と泣かれたのでもしかしてシャレにならんのかとびびった。ブログのネタになるかなと思ったが、もしこれを読んで「笑えねーよ…」と思う方がいたら頼みます、半笑いでもいいから笑ってほしい。がんばりますので。健康を目指して頑張りますので。

とりあえず冷蔵庫のチョコをなんとかしてから頑張りますので。宜しくお願いします。

水筒の紐

水筒の紐がなくなった。

園児用の水筒には肩掛け紐がついている。洗うときにはそれをとって洗う。寝坊して起きた朝、カウンターに置かれた水筒は中身が入っていたが紐がついてなかった。「あれ、紐は?」と私が聞くと、旦那が「え、知らない。どこやったの?」という。二人でちょっと顔を見合わせて互いを怪しんだ。

「水筒洗った人がどっかにやったのでは…?」と私。

「洗い場に置いてあった時点でついてなかったんだから、洗い場においた人がどっかやったんでしょ…」と旦那。

 

最後に使ったのは休日の公園である。

子供がごくごく飲んで軽くなった水筒を紐付きでリュックサックに押し込んだのが私の明確な記憶の最後。家に帰ってリュックサックから出して紐付きで床においたのが旦那の明確な記憶の最後。そして旦那が洗おうとしたときにはすでに紐はなかったという。キング・クリムゾンの如く紐の存在が歯抜けている。

子供が外せる構造ではないので大人が外したはずである。

ところで私は私の記憶力を信じない。なにかというと物をなくしがちだし、予定する日時はメモらなければたいてい間違う。人の顔を覚えるのも苦手だしゲームのルールも理解するのにけっこうかかる。なのでこういう記憶の食い違いがある場合、大抵私が忘れていると仮定している。そのほうがどっちが忘れたとかで一悶着するのをすっ飛ばして解決方法に移行できるからだ。

 

今必要なのは誰が紐を外したか、ではない。

どこに紐があるか、である。

 

すでに保育園への出発時間は残り15分を切っている。犯人探しなど時間の無駄。私は自分が紐を置きそうな場所を総当りで見た。いつもの壁掛けフック、無い。食器棚、無い。カウンター、無い。寝室、無い。テーブルの下、無い。

汗が出始める。

梅雨入りで湿気が増しているのに冷や汗で湿度200%を超えてしまう。

「もしかして車の中かな」次女のでろでろ流れる涎を拭いながらの旦那のボヤキに鍵を掴んで家を飛び出す私。座席の下、無い。チャイルドシート、無い。助手席、無い。大穴でダッシュボード、無い。もしかして:トランク、無い。車の下、猫もいない。

ピンクのキラキラした紐が無い。

時計が出発時間を告げる。吹き出す汗をそのままにして次女をチャイルドシートにしばりつけ、長女を急かして車に乗り、紐なしの水筒を引っ掴んだ。ヤケクソになりながら車を出す。水筒探しに時間を食って余裕がなくなり急かされた長女が文句を言い出す。

「靴履きたくない!傘ぐるぐるぱーん!てしたい」「ぐるぐるぱーんて何?!いや靴は履いて雨だから」「イヤ!!!長靴じゃない!サンダルはく!」「泥水が見えんのか?!?アマゾンの人?!ここ日本だから靴はいてはやく!」

園の駐車場でスマホの時刻が遅刻ギリギリを示してパニックになる私。ええいもう良い、と左手に次女と荷物、右手に紐なしの水筒と長女を担ぎ上げて走り出す。公衆の面前で担ぎ上げられた長女が癇癪のまま号泣!

「いやだああああ!!!長女ひとりでできるのにいいいいい!!」「ママまじで遅刻するからはやくしてって言ってるでしょ!!!」「ママのいじわる!!!いやだーーーー!!サンダルううう!!!!!」

暴れる長女とがなる私ときょとんとする次女。すれ違う子にポカンとされながら駆け込む園内。号泣する長女を先生にバトンタッチ!プロで天使で女神の先生が「落ち着くまであっちいこうね〜」とスムーズに号泣長女を部屋に連れて行く。そこに汗だくの私はせんせえー!!!と紐なしの水筒を突き出した。

「先生ごめんなさい今日紐無いです」

「えっ」

「なんか朝起きたら無くて。すいませんけど中身は入ってるんで今日これでお願いします」

「なにそれ凄い面白い」

ウケる先生。えーん面白がってくれるの?やさしいすき。緊張が解れる私。

「いやもうほんと嘘でしょ?!ってかんじなんですけど」

「焦りますねお母さん!わかりました、大丈夫です!……ちなみに紐が園にあるってことは…?」

「いや絶対家にあるんで大丈夫です!!!絶対あるはずなんで!!隠れてるだけなんで!!!スイマセン!!!!」

心配をおかけしてしまった先生に「マジで家にあるんでほんとマジで」を連呼して次女を教室に預けて仕事へ走った。遅刻はしなかった。

しかし仕事中も頭の中は水筒の紐でいっぱいである。ない記憶を掘り起こそうにも覚えてないもんは思い出せない。あとはどこを探せばいいんだ…心当たりはどこだ…まさか仕事用のカバンにとち狂って突っ込んだか?などと頭に過り唐突に鞄を漁ったりなどした。無かった。

 

子供を回収し家に帰る道すがらも紐を考える。パッションピンクでキラキラの紐。長女が選んだ水筒の紐。家の中で絶対にわかる色の紐。運転席で唸る私に長女が言った。

「あたらしいの買う?」

買わないなあ〜〜〜〜!紐だけは買わないなあ〜!絶対家にあるもん……。と返事をするが長女の頭ではすでに次の紐へ期待が膨らんでいる。

ユニコーンがついてるやつがいいと思う」「いや買わんて」

神妙な顔をして言う長女に、運転席から私は首を振った。

帰り着いてからも家中をうろうろして紐を探す。布団の隙間、鞄のなか、シンクの下…。そんなとこ絶対ないだろ、と頭の中の理性が言うことも、疲れてたら入れてるかもしれないだろ!と捻じ伏せて探した。無かった。夜に旦那が帰宅して、それでも見つからなかった。風呂に入ったのに汗がでる。ハウルの動く城の階段を登る荒地の魔女みたいな風貌で家中を探す。無い……ぜえぜえ……無い……くそっ……ここか?……無い……

 

ついに諦めが頭をよぎった。

 

買うか……紐……ユニコーンがついたやつ…

そんな考えがチラチラ過る。しかし無くしたら買うを繰り返すのは教育上よくないんじゃないか。そんなことも思いながら、部屋の真ん中で項垂れた。次女が足の周りにまとわりついて涎を垂らしている。メルちゃんを出せと催促してくる。ため息を付きながらおもちゃ箱を開けた。

 

あった。

 

水筒の紐がおままごとセットのコンロに絡みついていた。プラスチックのコンロはピンク色である。ピンクにピンクが絡みついている。私は紐を引きずり出して雄叫びを上げた。

「おおおあああああああったああああーーー!!!!!!!!」

多分宝くじが当たるときより声出た。

振り返ると次女が「えへえへ」笑っている。旦那が駆けつけて「なるほど」と言った。「昨日次女が遊んでだからな、おままごとセットガンガン叩いて」

つまり私が無意識に外してどこかにおいたのを次女が回収しておもちゃ箱に入れていたのだろう。普段のフックにも彼女は手が届くようになったのだ。恐るべし、子供によるテレポーテーション。すぐさま次女の手が届かない場所に紐をしまった。

ユニコーンがついた紐は買わなくてよくなり、私の冷や汗はようやく止まった。

見失いたくないモノ

家の中で良くなくなるモノランキング

 

第三位 スマホ

第二位 ボールペン

第一位 爪切り

 

いえ〜〜〜〜〜い!!!ちっくしょーー!!

朝から爪きりがなくてんぎぃーーってなってる。整理整頓をちゃんとしている勢からしたら謎のランキングになってると思います。だけど我が家では高確率で見失う。失くすんじゃないんです。絶対に家の中にあるはずなのにどっか行く。なので「見失う」と表します。言葉でプライドを引き止めているのです。

油断してると見失う。どこに置いたか分からなくなる。「なんで??」って一番思ってるのは見失った本人ですから追撃しないでほしい。特にスマホの見失いっぷりは引田天功にも引けをとらない。5分前までいじってたじゃん!!!どこいった???

実を言うとここでパニックにならないのがコツです。メンタリストかかしに成り切って、5分前からの動線をもう一度なぞる。娘に呼ばれて、移動した。右手に持っていた。トイレに行こうとして……トイレではすでに持っていない。とするとリビングとトイレの間でどこかにポンと置いたか。置くとしたら?机にはない。椅子にもない。ソファの隙間!あった〜〜〜〜!!ダメンタリストかかし、完ッ!

 

こういうのが1週間毎くらいにある。ボールペンも大体同じ経緯で見つかる。自分でもどうかと思う。スマホを探して幽霊みたいに家の中をうろうろしてると後ろで旦那が「ちゃんと置く場所決めないから…」とか言ってきますけど、君も大概だからな。イヤホンめちゃくちゃ見失ってるのアタシ知ってるわよ。財布だの荷物だの電車に忘れたりしてるのも知ってるわよ。人のこと言えないんだからなァ!

 

スマホやボールペンは良いんですよ。毎日使うものなので、見失うのも多いけど見つかることも多いから。面倒なのが爪切りです。しかも子供の爪切り。

うろちょろする子供を捕まえてその場で爪を切り、薬塗って着替えさせて…なんやかんやしてふと気がつくと見失っている。足でも生えてんのか。どこいった、と探しても出てこない。全然出てこない。そのうち他のやることが迫ってきて「うーん、そのうち出てくるか」って捜索を打ち切る。

そのまま忘れます。

そして次に子供の爪を切るときに「無い…!!!!」ってなるんです。すでに記憶が薄れているのでメンタリストだって役に立たない。覚えて無いものを思い出せるか? 無理です。

探しても探しても出てこない爪切りにイライラ。掃除しても布団片付けても出てこない。その間にも子供の爪は鋭く尖っていく。痛い。腹を突き刺す子供の爪は凶器。ひーんでも見つからない!ないよぉ、ないよぉ〜!!

 

そんなわけで新しい子供の爪切りを買う。

 

新しい爪切りでとりあえず子供の爪を丸くして、やれやれとほっとする。もう無くさないぞと定位置において、落ち着いて掃除をやり直すと棚の隙間に爪切りを見つける。

もう買っちゃったけど??!!

ショックを受けながら爪切りをしまう。増えた爪切りを見ながら自分をなんとか納得させる言葉を探す。「まあ無いよりあったほうがいいし。子供二人いるしふたつあっても大丈夫大丈夫大丈夫」だいじょうぶ!

 

 

そうして増えていった子供用爪切りが合計4個です。

 

いらねぇだろぉがよぉ。(巻舌)

どうすんだよこんなに…片手ずつ使えってことか?大体すでに2個あったのに使いたいときに出てこないのを「無くした」と思って買いに行く癖やめた方がいいよ。1個目をなくす→2個目を買う→2個目を見失ったから1個目を使う→1個目を見失う→3個目を買う→2個目を見つけるが3個目を見失う→2個目を見失う→4個目を買う。………。

なにをしてんだおめぇはよぉ?(巻舌)

見つけた経緯もおかしいよ。棚の隙間、棚と壁の間、棚の下はまだわかる。爪切りを置く棚周りだからな。滑り落ちたんでしょう、わかります。

洗濯機の下から見つかったのはどういうわけだよ。

洗濯機周りで爪切った記憶は流石に無い。どうしてこんなところから2個目の爪切りがでてくるんだ?あとなんで4個も買ったのに常に使えるのが0.5個なの?うちの爪切りは脱走兵か何か?集めても集めてもバラバラ逃げてく。そんなに怖いのか子供の爪が。役目だろ、ちゃんとその場にとどまれ。

 

大掃除の末見つけた爪切り4個を、もう逃さないようにちゃんとニトリで収納ボックスを買ってきてしまった。ちなみに大人の爪切りもなぜか2個あった。

整理整頓は「戻す場所」を習慣付けることが基本らしい。二度と爪切りを見失わないよう、こんだけ目立つところにちゃんと集めといたら大丈夫でしょう。目指せ、ちゃんとしまえる我が家!これで「まあいいや、あとで探せば」は卒業だーッ!

 

で、今朝また見失った。

3個目のやつが脱走した。

「あとで探せばいいや」は卒業したいので今頑張って探しています。3個目の爪切り、大人しく出てきなさい。故郷のワタシガ泣イテイルゾ。そろそろめちゃめちゃ泣くぞ。早く出てきておねがい。

 

皆さんのお家の「家の中でよくなくなるモノランキング」はなんですか。そもそもなくさない人は偉すぎるのでそのまま生きてください。よくなくす人は仲間です。奴らを見つけるまでお互い頑張りましょう。

初映画で初プリ

※ちょっと映画「ドラえもんのび太の新恐竜」のネタバレがあります。

 

 

 

 

映画が大好き。基本は王道系を見て、ハリウッドの思惑にワー!って踊らされるのが好きだ。子供の頃から大好きで、クレヨンしんちゃんドラえもん、コナン、ディズニーやジブリは大人になっても毎年チェックして春夏秋冬を楽しんでいる。コナンの映画は私にとっての花見だし、ドラえもんやしんちゃんは夏休みの花火で、ディズニーとかジブリ映画は数年おきに流れてくるお知らせを見て行く御神輿って感じ。

そんな我家なので、Netflixは当然契約してる。子供にそれらの映画の制限もしていない。むしろ夕飯や昼飯を作る時間なんかは「見る?」などと唆しテレビに預けている。悪い親である。しかし他に家事中の「ママ見てねえ見てほらこれ見てねえこっち見て今見てやれ見てそら見てこれ!!!!!!!ねえ!!!見て!!!!!鼻くそ!!!!」みたいな攻撃を躱す方法が思い浮かばない。知ってる方は教えてください。

 

そんなわけでその日も長女は映画「ドラえもん新恐竜」を見ていた。恐竜が好きなら恐竜が出る映画が良いじゃない?にまんまと乗っかってくれた形である。私はテレビからの「ドラえもーん!!」「そんなことあるわけない」「鼻からカルボナーラを食べる!」「やめなよ!」という音声を聞きながら皿洗ったり掃除したりしていた。ドラえもん良いなあ。早く開発されないかなぁ。どこでもドアだけでも良いから早くなんとか作って欲しい。

映画も終盤に差し掛かる頃、次女を膝であやしながら洗濯物を畳んでいた。時計を見ると次は夕飯の自宅まで少し余裕がある。ふふふ、今日の時間配分は良い感じだ……などと自画自賛している、と。

 

「うわあああーーー!!!!!!!!!!!(号泣)」

 

長女が突然泣き出した。

えっなになになにえっなに???急に何??!振り返ったらテレビの前で突っ伏してむせび泣く5歳児。いや本当に何?テレビではのび太が涙を拭いている。恐竜との別れのシーンだ。タイムパトロール船を追う二匹の恐竜が懸命に羽ばたいている。恐竜がのび太を呼ぶ声に被せて長女が泣く。わんわん泣く。えっなにもしかして。

「もしかして悲しくなっちゃったの?」

「うっ、うっ、う゛ん゛…!ううう〜〜〜〜ああ〜〜〜〜〜!!(号泣)」

「おお…」

側に寄った私にしがみついて泣く。びゃあびゃあ泣く。私はその背中を擦りながらちょっとばかし動揺した。

人が人生で初めて感動する姿を見てしまった。

すごい…5歳児って感動とかするの…。悲しいけどかなしくない、みたいにぐずる長女に逆に感心する。話の内容がわかったといっても、まだまだ単純なうんちとかオシリなどのワードが好きな年頃である。別れのシーンでこんなに泣きじゃくるなんて思わなかった。それだけドラえもんの映画がのび太と恐竜の交流を丁寧に描いていたからでもあろうが、それを理解できる年頃になったのか…。

娘の感動にじーんとしていると、次女が泣いている長女の頭をペシペシと(本人なりに)撫でた。あらやさしい、とそれにも和んでいた私の前で、次女は長女の顔を覗き込むと

 

「ウェーン、あはあはうぇへへ」

 

泣き真似をして笑った。

 

「うびゃああああーーーー!!!!!(大号泣)」

さらに泣く長女。「うぇへへへうえーん」と笑いながら泣き真似をして煽る次女。「やめなさ……いや煽ってるわけではないのかこれは1歳だし」とおろおろする私、テレビのしんみりしたエンドロールで部屋はカオス。結局、その日の夕飯は押されて焼きそばになった。時間管理など幻想であったのだ。

 

 

まあ、そんなわけで。

長女が2時間しっかり映画を理解しながら見れることがわかった。凄い成長だ。アンパンマンでうろちょろしてたのにこれは大きな変化。いつか子供と映画館に行きたい私の夢がまた一歩近づいたかもしれない。

そんな折、公開されたのが「スーパーマリオブラザーズ」!予告から面白そうな予感がプンプンするなあ!?大好きなキノピオとピーチ姫が出ることで長女もノリノリ。私は「映画館……?長女ちゃんもいけるの…?ピーチ姫見れる?」とはにかみながらわくわくする長女をはじめての映画館へ誘った。

めいっぱいのオシャレをして、髪を結んでキメて、トイレも済ませる。何かあったらすぐに退出し易い通路側の席を取り、小さいポップコーンも買っていざ出陣。予告からわくわくしながら座席に座り、一緒にマリオを見た。大きな画面に釘付けになり、思わず前のめりになったり私にしがみつきながら見たりする娘の横顔を盗み見るのは楽しかった。驚きの展開に二人で顔を見合わせて目を丸くするのも擽ったい。長女が映画を楽しんでくれているのを感じて、私もワクワクが止まらない。

映画はめちゃくちゃ面白かった。子どもと楽しめるエンタメ映画として、そしてはじめての映画デビューでマリオを見れて凄く良かったなあと感じられる映画でした。こういうワクワクを積み重ねて、長女も映画を好きになって行ってほしい。将来私と趣味が合わなくなっても、エンタメを楽しんでて欲しいなあと、手付かずのポップコーンを思考の外に放り投げながら映画館を楽しんだ。

 

帰り際、せっかくだし隣接されたゲーセンにも寄った。長女はちょろちょろと機体の間を見て回ると、ぱっと振り返って「あれやりたい!」と指差した。プリクラである。

初映画で初プリ。

良いねえ!!と盛り上がった気分のまま500円玉を両替しt…………ええ?!?いまのプリクラ500円もすんの?!?物価高の波ここまできてんの?!なに?!これも戦争のせいかよ?!ゆるさねえプーチン。お前もプリクラでデカい目になれ。顎削れろ。

記憶のプリクラとのギャップに動揺しながら100円玉を5枚入れる。事前設定の多さにわたわたしながら設定をする。すごい。モードがいっぱいある。どゆこと。入ってパシャじゃないのん?うわ証明写真も撮れる。すご。どゆこと。

「はやく!はやく!」と引っ張る長女を宥めて設定を終えて撮影ブースへ。広い。あれえ?!後ろの壁が緑じゃない!うわ荷物置くスペース広…。可愛らしいアナウンスに従い、娘と一緒にカメラに収まる。

そこで我に返った。

ポーズってどうやるんだっけ。

もう何年もプリクラなんて撮ってないから忘れてしまった。そもそも現役時代だってピース1択でギャルピースとかしたこと無い。まずい。5歳児と三十路のプリクラのポーズの正解とは。アヒル口か?言って伝わるか?ハートの作り方っていまたくさんあるんだっけ?何種類?500種類くらい?白は200種類あるんよな?

オタオタする私の横で長女がサッと動いた。両手を頬に当て私に身を寄せる。そしてカメラへ上目遣い。「ママ、ちゃんとポーズして!」

 

えっえっえ〜〜〜〜〜????!!!!!

私の娘………モデル過ぎ……??!!!

 

流石スマホ世代は撮られ慣れている。動揺のまま頬に手を当てる。アナウンスのお姉さんが盛り上げる『撮るよ〜!』パシャ!!

う、うわーー娘とプリクラ撮った…!もう次いつ撮ってくれるかわからん…。何度目かの感動にじーんとしてるとさらにアナウンス。『次はピースしてみよう!』ハッとした私は流れるように顎ピースをした。

 

あっこれ古『撮るよ〜!』パシャ!!!

 

画像には母親に合わせて裏ピースをこなす長女が映っている。

お遊戯で培われた5歳児の対応力すごない?

そこからはアナウンスが言うままに楽しくてひたすらポーズを決めていく。『頬をつまんで!』『ほっぺつん♥』『頬に手を当てて〜!』ありがてえ………。今のプリクラは棒立ち人間への福利厚生が手厚い。たすかる……。

撮り終わって満足する長女と落書きブースへ。せっかくなので盛りに盛った。「長女もやるー!!」とふんだんに落書きやらスタンプやら押しまくる娘。二人で画面にへばりつき、「これどうやるんだろう?」「ここ押したらなに?」「あっ塗ると髪の色かわるー!」とかやいやい言いながら盛っていく。

楽しい。機能が多すぎて使い切れん。あとプリクラって落書きになると何書くかわからんくなるよね。わからなすぎて無意味に「Iove&peace」とか書いてしまう母。「なんて書いたの?」と長女。「愛と平和」「なんでかいた?」「いやごめん…」己のダサさを突きつけられた母。しかしこのダサさも思い出さ、とそのまま通した。

 

出来上がったプリクラは詐欺プリであった。

 

デカすぎて原型を留めていない目。削られすぎて人相に影響している顎。特に長女は子供の愛らしさが無理矢理大人の盛りになってるので詐欺感が凄い。元々の美肌は行き過ぎて発光間近だ。プリクラって元が可愛らしいとエイリアンみたいになるんだなあ。かかし。

キラキラの写真にきゃー!と歓声をあげて長女はプリクラを抱きしめた。「早く帰ってパパに見せる!」とスキップで車に向かう。私は長女を追いかけながら、まあいいか、と課金してプリクラのデータを全部ダウンロードした。母娘でプリクラなんて撮れる機会が何度もあるとは思えない。

宇宙一可愛いエイリアン娘と、現実とかけ離れた私の初プリを持って、私達は車の中で映画の感想を伝えあった。はじめての映画館体験は長女にとっても楽しかったようだ。でもそれ以上に私が凄く楽しかった。次女の時も、楽しめたらいいな。

 

 

 

余談。

帰ってきた長女が「これシールになってるじゃん!!!!」(シール大好き)と感激して、初プリは長女のお道具箱の引き出しに貼られた。私は掃除のたびに詐欺プリを直視することになった。鏡を見るたびに罪を数えることになる。うえーん!!!

成長と斬れ味

入学進級の季節ですね。環境の変化にぐったりしながら、日々をなんとか熟しています。大体朝ワー!て起きてぎゃー!て仕事行ってひーん!て帰ってきてダーッ!と夜寝るまでわたわたしている、そんな毎日です。

そんな毎日なので、記憶に残る出来事が少ない。とにかく日々のやらなきゃならないノルマを熟すのに必死で、取り零したものを夜に「あーあれできなかった、これもやってない」と後悔しながら浅い眠りにつく。そんなかんじ。

で、ふと我に返って隣を見ると、いつの間にか成長してるのが子供というイキモノ。気づけば長女はしっかりおしゃべり上手な女の子だし、次女は意思表示ができる赤ちゃんになっていた。うっそ。いつの間に。

こないだまでバブバブ言ってたし寝返り打てなかったじゃん。

私が毎日出来ないことを数えている隣で、できることが増えていた子供たち。頼もしいですね。未来を育むってこういうことかあ、と嬉しくなります。

 

しかし、私の予想以上に成長してるので、ときどきちょっと予想外なところで傷つきます。子供だ子供だと思っていたら実は私が思っているほど子供じゃなかった、そういうことが時々あるのです。

 

例えば帰りの車で長女が「ねえ、雲に乗れたらなにしたい〜?」と言い出した時とか。

私は子供らしい長女の会話にウキウキしながらノリました。

「え〜!ママ嬉しくてぴょんぴょん雲の上飛んで色んなところ行きたいな〜!」

夢いっぱいの三十路親の回答。すると長女は「えっ(笑」と半笑いになり

「いや雲には乗れないでしょ(笑)」

 

あなたがフッてきた話題なのに??????

 

突然半笑いで梯子を外されて私は狼狽えました。「えっ…ああ……うん…そうだね…」と答えるのが精一杯。この会話の間に急に現実的になってしまった長女に小さく傷つきながらアクセルを踏みました。取り敢えず早く家に帰りたい。そう、雲には乗れない…どこにもいけないのだから…。

 

 

女の子って冷静ね…。そんなリアルを知った数日後、保育園のクラスで人気の子の話になりました。

「○○くんだいすき!みーんな○○くんのこと好きなんだよ!」という長女。私も○○くんは知っています。たしかに元気でめっちゃ挨拶上手な子。そうか〜、長女もそんなことを話題にするようになったか〜!とほんのり嬉しくなりながら相槌を打つ私。

「○○くん、良い人だもんね〜!」

「いちばん髪型がかっこいいからね!」

 

あっ、髪型か〜〜〜〜〜〜!

 

そっか……髪型……性格とかではなく…?

大人かと思えば子供の価値観で、空振った感が半端ない。そっかあ、髪型かあ。いやまあ確かに、うん、かっこいい…?

送り迎えの僅かな時間でしか合わない○○くんの顔は思い浮かんでも髪型までは正確に浮かばぬ母。しかし「クラスのみんながかっこいいと言う髪型」なら園児からの人気は凄いんだろう。○○くん、オシャレリーダーだったのか。そっかあ、髪型かあ。

恋バナにはまだ早かったか…。どうやら私が思うより大人ではなかったらしい。口ぶりは完全にJKのそれだったのに、ギャップすご…。髪型かあ…。

 

そして今朝、休みで布団を楽しんでいる私の隣で、朝早くから絵本を読む長女。

「そして、エルサはいつまでも寝ているアナを起こしにいきました」

元気いっぱいに朝5時からそこまで音読し、長女は「んふふw」と吹き出しました。

 

「いつまでも寝てるwママみたいww」

 

はい〜〜〜〜!!!!すみませーーーーん!!!!

思わず吹き出す私。「あ、起きた」とけらけら笑う長女。いやまあ事実だけどさあ!もうちょっとオブラートに包むとか、さあ!

ぐうの音も出ないまま布団に潜り込む私に乗っかり、続きを音読する長女に、私が思ってるより大人だし、私が思ってるより子供なんだなあと、ちょっとだけ傷ついた心を擦りました。事実だからね。言い返せないからね。できる限り布団から出たくないからね。

 

 

 

きっと私はワーッと毎日過ごしているので、変化に気づいてないだけで、子供は毎日成長してるはずなんですよね。私が勝手に「まだ子供だろう」とか「そろそろわかるか」とか、侮ったり期待してるから、その落差に勝手に傷ついたり驚いたりしてるだけなんでしょう。

次に子供たちが成長してるのに気づくのはいつだろう。多分また勝手にびっくりして気づくんだろうなあ。

いやしかし、どこでもドアの話ししてるときに急に「遠くのまちにドアではいけないでしょ(笑)」って現実見せてくる系のやつは控えめにしてほしい。斬れ味すごいんよ。ママはまだ夢いっぱいなので。そこらへんママは子供のままなんで。ママの夢壊さないでほしい。ドラえもんは実現するって信じてるんで、ママは!

手加減宜しくおねがいします。

遊びの天才

あったかくなったり寒くなったり暖かくなったり、安定しない天気が続く。とはいえ、真冬よりは日差しが柔らかくなったので外で遊びやすくなった。子供の体力を削るには、まず日に当てて外に放し、お腹を一杯にさせてお湯に浸すこと、これに限る。限るんだけども、真冬はやっぱり辛いので、外より室内遊びになる。私は出不精だし、寒いときは外より家で遊びたかったし、そうなれば自然と子供の体力は削れないのだ。

けれども春。春だから!

最近は外に遊びに出かけたり、児童センターに連れ出すことも億劫ではない気温になってきた。それは私だけでもないようで、やっぱり暖かくなると遊び場には子供が増える。きゃーきゃー走り回って目新しいことに飛びついて遊ぶちいさき人々。元気の塊だなあ。遠くから見ていると、特に知り合いでもないのにその場で遊んでる子供の群れにはそれなりの流れができているのがわかる。走り回るグループ、ひたすら玩具を出すグループ、おままごとは二組くらいが互いを意識しあいながらやってるし、小さい子が交じると小さい子のよたよた歩きから大きい子が笑いながら逃げていく。

そんな中で、まあ、大体の確率で、いるのだ。遊びの天才が。

それは児童センターだったり公園だったり、場所に限らない。子供で賑わう遊び場に、大体一人か二人はいる。

 

例えば、大きい公園に行ったとき。

最近の大きくてキレイな公園には、土から生えるマシュマロみたいな、屋外トランポリンがあったりする。子どもたちがわらわら登って、飛んだりはねたりできる白いゴム製の小山である。特に大人が追い回して走ることもなく、子供が自発的に物凄い体力を消費してくれる優れた遊具だと思う。大体4〜5歳の子からしっかり遊べるので、小山の周囲には大人がそれなりの距離をとって眺めているのもよく見る光景。うちの長女もつくなりワーッと靴を脱ぎ散らかして登りに行って、私はポケットに手を突っ込んで遠巻きに見ていた。既に山には5〜6人ほどがぼよんぼよんと跳んでいる。元気だわ〜、と眺めていると、その中の一人が急に山の頂上で寝そべった。

『遊びの天才』である。

その子は手足を放り出し、なるべく背後のゴム製マシュマロに沿うように寝っ転がった。他の子が跳ぶ弾力が、寝転がった彼をボン、と弾ませる。あんだけ足が上下に跳ね回る中、寝転がる度胸。その子はにこにこしながら目を閉じてる………目を閉じてる?!心臓に毛でも生えてるのか、他の子のジャンプによる振動を目を閉じて楽しんでいる。

特に合わせて跳んでいるわけではないから、子供たちのジャンプはバラバラだ。だから寝転がる子も不規則に体全体が浮かぶ。ボンボボボッボンッボンッボボッボボボンッ。寝転がってうふうふ笑う子に、他の子達が気がついた。跳んでる子達はジャンプしながら場所を変え、寝転がってる子を中心に円を作った。ボボボッボボボッボンボボッボボン。強く翔べば寝てる子が大きく浮かぶ。円は不規則にびょんびょん跳んで、真ん中の子はそのたびにうふうふ笑いながら体を転がした。ボボボボボボっ。

 

儀式が完成した……。

 

小山の頂上でなんか変な儀式みたいな遊びが完成していた。感心して眺めていた私の前で、大きな子たちが一際高くボボンッと跳んで、寝転がってる子はゲラゲラ笑いながら小山を転がり滑り降りた。それをきっかけに跳んでた子たちもケラケラ跳びはねながら散っていく。すんげえものを見た。あの天才一人がやってみた遊びで、子供が無言で集結して遊んで自然に散っていった。すんげえ。

長女が手を振るのに振り返しながら、束の間の儀式にただただ感心していた。

 

例えば、児童センターに行ったとき。

子どもたちはおもちゃ置き場で思い思いに遊んでいる。次女が出しては投げる玩具を回収しながら、私は日向でボーッとしていた。

一人の子供が輪投げを床に投げた。輪っかがコロコロと転がって、壁に当たってくるくる回りながら落ちた。目をつけた遊びの天才がワッと寄っていく。

その子が輪投げをポーンと投げて、跳ね転がった輪っかを追いかける。ブロックで遊んでいた子がパッと顔を上げて合流する。落ちた輪っかがまた転がる。人形を放り投げた子が走り出す。

見ているうちに4〜5人の子どもたちが輪っかを追いかけて部屋を右に左に駆けはじめた。追いかけられない0歳児も、床に座って視線で輪っかを追いかける。ポーン、ワーッ、ポーン、ワーッ!

そのうち天才のテンションが上がりきり、輪っかがポーン!と高く飛び跳ねて、積み木の中に突っ込んだ。天才はケラケラ笑って、輪っかを無視して積み木へ向かう。他の子たちもワッと笑ったかとおもったら、満足したのか遊んでた玩具の元へ帰っていった。私は雄叫びをあげる次女に頷きながら、すげえもんを見たな。と思った。

ハーメルンの原型みたいな。

時間にしては5分もない、短いものだった。その間に子どもたちは特になんの打ち合わせもなくワーッと集まって、部屋中を駆け回り、ワーッと散っていった。笛吹き男はいなかったはずだが、なんか魚の群れが集まってまた散っていったみたいな、なんとなくすんげえもんを見た気がしたのだ。

 

コミュニケーションとかではないとおもう。見た感じ、共感とかでもなさそうだった。切っ掛けはちょっと違う遊び、だと思う。天才がいるのだ。みんなも遊んでいるけど、ちょっと角度が違う、でも絶妙に面白いことを見つける天才が。

子供たちは天才に引っ張られて「お!たのしー!」とばかりに参加する。参加に了承とか認証とか特にない。面白そうだからなんとなく集まってひとしきり遊ぶと散っていく。みんなが散っていくのを天才は止めず、また違う誰かが遊びの天才になる。

子供の群れおもしろい。

 

私が子供だったときも、遊びの天才はたしかに居た。あの子がなにか言うと遊びが盛り上がって、ゲラゲラ笑った後に解散した。ような気がする。よく覚えてないんだけど、でも多分居た。居たに決まっている。時々私も遊びの天才になってたかもしれない。記憶にはないけど、長女が家でキラメイジャーレッドに「じゃあ、あなたはワンちゃんよ」と言っているのを見ると、私も子供の時は変な遊び方見つけてたんだろうな、と思う。次女が玩具よりペットボトルをボンボコ叩くことに夢中なのも、遊びの天才を身のうちに秘めているからだろう。

 

春は子供がつくしの如くわらわら出てきてて面白い。もっとあったかくなってほしい。夏は暑すぎないで欲しい。付き添いの親は立っているだけなので、特に体力はつかないのだ。だからまあほどほどに頼む。子供たちだけで体力を削り合って、そして夜は寝てほしい。

頼むぜ天才。

寝床のテトリス

突然ですがうちには4歳長女と0歳次女の子供がいます。とっても元気です。

寝てるときも元気です。

子供って昼間の運動量が半端ない。1秒もじっとしていないし、エブリデイ歌う。長女はチュッパチャップスを片手で持って「チュッパチャップスの包み紙を開けてほしいの歌」を5分くらいこっちを見続けて歌う。開けてあげるから早くよこしなさい、と言っても歌い終わるまで離さない。遮るとまた最初から歌ってくれるので私は見事「だからーあけてほしいのー♪」という堂々の歌い終わりと、長女の深々としたオジギを大人しく待った。うどん屋の駐車場での出来事である。

 

閑話休題

 

とにかく、起きてる間はじっとしていない。じゃあ寝てるときは?流石に歌いはしないが動き続けている。そう、今日は子供の寝相の話です。

 

我が家は一室に布団を敷き詰めて、そこでみんな揃って寝ている。ベッドだと私がおっこちそうだし、赤ん坊を寝ぼけながら抱き上げるのが怖くて長女が産まれた時からこのスタイルだ。そうして現在家族四人。私は毎晩テトリスになっている。

長女の寝る直前までのおしゃべり(ぬいぐるみのくまちゃんがメルちゃんと喧嘩したけど原因はうさぎさんがジャンケンで勝ったせい、とか)を黙って一時間聞いて寝かしつけ、寝ぐずりする次女をひたすら抱っこで寝かしつける。やれやれ寝たぞと子供をおいて、自分の身の回りを片付けて、よし寝ようと扉を開けると、ほんの15分前とは別のところで子供たちが寝ている。

アクロバティック。

長女の頭が上下逆転して大の字になってるのはまあ、良い。次女が布団のど真ん中で妙にシャキッとハイフン(-)になってると、困る。寝る場所がない。

つまり今日のテトリスはこうだ。

 

 ○  ■

 ○□□■

 ○  ■

 

白い□が次女、黒い■が長女、白い○が旦那である。眠たい私はうろうろとスマホのライトで隙間を探し、そして隙間を見つけて体を丸める。

 

 ○  ■

 ○□□■

 ○●●■

 

●が私である。

これで1列埋まったね。やったあスペースが空くぞ〜!と思いながら眠りにつく。これはテトリス実写化なので消えはしないのであった。残念。

またある日はこう。

 

 ○■□□

 ○ ■

 ○  ■

 

長女が布団をバックスラッシュ(\)で寝てる場合である。しかも左上には丸まった次女。おかしいな…ちゃんと川の字になるように次女は真ん中に寝かせたんだが…。乗り越えたの?寝ながら?うそぉ。私は考えた末に布団の隙間に体を入れて無理やり目を閉じた。

 

 ○■□□

 ○●■

 ○●●■

 

L字になっても人は寝れる。30ウン年生きてきてはじめての知識。

 

旦那が先に寝ていないときは、もちろん私が先に場所を乗っ取って寝ている。必然的に大人二人がお互いの挙動をちらちら伺いながら、どっちが先に寝るかの静かなレースをしているのだ。はっきりと言葉にしてどこにねる?みたいな相談をはじめてしまうと毎晩話し合わなきゃならなくなる。そんなの面倒すぎる!私も旦那もさっさと寝たい。そうなれば早いもの勝ちが合理的だ。自分の寝床は自分で掴む。そう、大人ならね。

 

昼間ならまだしも夜中も動き回るなんて子供は本当に体力がある。あと普通に人を乗り越えてどっか行くのが不思議すぎる。乗り越えていく次女も、乗り越えられる長女も、すでに慣れたもので、次女が寝ながらもぞとぞ腹に乗ると長女がむにゃむにゃ言いながらぺろっと長女を押しやるのをこの間目撃した。寝てるのに。器用…。

 

そんなわけで寝不足だ。もう少し子供が大きくなったら、私も一人で寝れるかな。とりあえず最近負けっぱなしで限界だから今夜は私が縦棒を取るぞ。わはは。