スキンケアしようとしただけなのに

スキンケアって大事ですよね。

男も女も肌が綺麗だとなんか健康そうに見える。恥ずかしながら30過ぎまで正しいスキンケアをよく知らんまま生きてきたんです。なんとなく洗顔と化粧水つける…ってことは知ってる。そのくらい。元々化粧も苦手だし、オタクなので「化粧品の値段でコミックが4冊買える」って考えちゃうからスキンケアとかわけわかめ。ズボラなのもある。でも違うんです聞いて?まず聞いてほしい。なんでこんな30代ができあがったのか。

 

10代の頃に美容院で言われた「肌綺麗だね〜」というお世辞に全幅の信頼を寄せて生きてきたんです。

 

昔の私素直すぎんか。よしんば素直だとしてもそのまま信じて30越えるのはそれはもう無謀よ。ボートでグランドラインを目指してどうする。海賊ごっこは終わりなんだよぉ!

毎朝起き抜けの我が子を見てようやく知る「10代の肌がキレイなのは当然」問題。つるつるの肌を見るたびにビシバシ突き刺さる「おまえこれでいいのんか?」という焦り。

だが30年……いや年頃をさっぴいて15年ってことにします。ゆるして。……15年間スキンケアを「なんか顔を洗って化粧水つければいいらしい!」っていうぼんやり知識で生きてきたズボラがいきなり改善案を思いつけるはずがあるか?!いやない!!(反語)まったく何も思いつかない!!調べてもよくわかんない!雑誌の人がつけてんの化粧水じゃん!乳液じゃん!バカ高いから買えないよ!でも私が持ってるのも安いけど化粧水と乳液だよ!?じゃあ……これでいっか!

 

良いワケあるかァ!!!

 

ところで旦那のお母さん、つまり義母さんはおしゃれマダムです。凄い若くてピチピチしている。なんなら私よりハリがあってエネルギッシュ。カッコいい上に飯がうまい。最高。年末年始に帰省すると、何もしない私を見かねたのか放っておけないのか、色々とお世話をしてくれます。ありがてえ〜〜〜。

今回の年末年始でも、「美顔のエステ?マッサージを習ったからかかしちゃん実験台になって!」と仰ってくれたので、ありがたく実験台になりました。秒で寝ました。気持ち良すぎて………。何されたか後半覚えてないのでなんの知識にもならない……。ただひたすら気持ちよかった……。そしてここ数年で一番化粧ノリが良くなりました…なにされたのわたし……。こわ……。

つるつるもちもちになった顔を触りながら私は閃きました。そうだ!義母さんのマネをすればスキンケアはバッチリってことじゃないか?!ついでに髪がつやつやになる方法も聞いてみよ。私は張り切って聞きました。「寝て起きると髪の毛がぶわっぶわになるんですけどこれなんですか?」

義母さんは言いました。「髪の毛乾かしたあと梳かしてないからだよ!!?!?」

 

ズボラがバレていましたねえ……。

というか基本的なことが何もできてないということでした。当たり前ですね、15年間化粧よりマンガに金を注いできたので。コンパスの読み方もわからず海に出てるこいつ…みたいなことでしょうね。死ぬ気か?

 

かかしちゃんはもっと自分を大事にして!子育て忙しいのわかるし子供に真っ先にかかりきりになるのわかるけど風呂上がりの5分は自分のケアに使って!大丈夫だから!

義母さんのごもっともでありがたいアドバイスにより、年末年始でスキンケアの知識はぐっと増えました。あと髪の毛ツヤツヤになるシャンプーも教えてもらった。そんなもんがあるのか。かがくのちからってすげー!

化粧水はたくさんつけること、乳液の前に美容液つけると良いこと。塗るときはリフトアップとかリンパとかを意識して塗ること。髪の毛は梳かしてちゃんと乾かすこと。子供に教えるように丁寧に教えてもらったのはマジで基礎の基礎。多分雑誌とかYou Tubeとかで調べれば確実に出てくる。でも調べ方がそもそもピンと来てなかったので、教えてくれて本当にありがたかったです。実際やってるところを見てもらって教えてもらえるの、贅沢。30過ぎると誰かに教えてもらうことが本当に貴重なので。誰も教えてくれないからね……聞いてよかったね…。

 

なんだかお高い美容液も「つかいなさい!!」と持たせてくれて、お家に帰ってから風呂上りに子供の雄叫びから逃げて鏡の前に立つことができるようになりました。よっしゃ、今年の目標はスキンケアにするぞ〜!化粧水を並べて鼻歌歌ったところで閃きました。

パックってやつつければもっと良いのでは?

確か義母さんもつけてた!貰い物のパックを引っ張り出してみる。パッケージには華やかな字体で「これ一枚で全部完了!」って書いてある。混乱が私を襲う。

 

じゃあ……持ってる化粧水とか乳液はどうすればいいんだ…?

 

うーーーーん。首をひねって裏書きを読む。「化粧水でお肌を整えたところに…」まで読んで「なるほど!!」とパッケージを開けた。はやいはやいはやい。サンタをクビになったことが何も活かされていない。説明書は最後まで読めって学んだはずでしょ。

今でこそツッコめるものの、その時の私はドア越しの子供のワーキャー声に「はやく脱衣所から出なきゃ」で気が散っていたのです。説明書きはざっと読み、記憶の義母さんをちらちら思い浮かべながら袋に手を突っ込みました。

にゅるっとする。

予想よりも滑るパック。美容液でたぷたぷに重たいそれを勢いよく掴んだので掌がビシャアッと濡れた。引きずりだそうとすると逃げる。活きが良い。踊り食いさながらに危なっかしくパックを引き摺りだし、パッケージをポイッとしてパックを開こうとした。

もたもたする。

濡れに濡れた紙を広げるのに悪戦苦闘。元々指先は不器用だ。昔、娘と折り紙で作ったライオンは死んでいた。親指と人差し指でパックを掴み、開こうとすると別のところがペタッと折りたたまれる。なぜ。そこを開こうと指を離せばぐちゃっと捩れる。どうして。滑り落ちそうになるから慌てて掴めば掌全体で握りつぶした。何が起きた?握りつぶしたんだよ。

なんとかかんとか開いたが、顔の上半分しかきれいに開けなかった。ほぼパック初心者の私は(こんなもんだったかなあ。まあこんなもんだった気がする)と自分を落ち着けました。最終的に顔に貼れれば良いのよ。

そのまま勢いよく顔に貼り付けた。

ビターンッと目を開けたままいったので、美容液がもろに目に染みた。

「オアーーッッ?!?」か細い雄鶏みたいな声が出た。

思わず剥がそうとしたが躊躇する。貰い物のパックはお高い。これ1枚でマンガ2冊買える。必死で目を閉じたまま感覚を頼りにパックを伸ばして顔の下半分に貼り伸ばす。ていうかこれ目まで覆われてるんだけど。なにこれ?目までばっちり覆われるタイプなの?

(※ちゃんと説明書に「目の部分を外側へ折って穴を開けてお使いください」って書いてありました。読みましょうね)

すべてを貼り終えてじんじん染みる目元に洗面台へ縋る。このまま何分待つんだっけ。そう、パックは貼ったら美容液を染み込ませる時間が必要なのである!パッケージには15分とか書いてあった気がした。だがしかし時計が見えない。体感で測るしかない。俯く私のすぐそばで「あーー!!」と赤ちゃんの声がした。

0歳の次女がドアの隙間からこちらを覗いている。

薄目で確認し(目が超痛い)やばい、ドアがあいてると焦った私は0歳へ屈んだ。そして昼間よくやる赤ちゃんへの返事をした。驚かせないように静かに。

「…………ウゥー(低音)」

 

「うぎゃあーーー!!!!!!!!!!!」

0歳がギャン泣きしだした。

 

母親が消えた場所(脱衣所)を覗いたら女がいて、母親かと思って声をかけて振り返ったらその顔面が真っ白で、ゆっくりかがみこんできて唸り声を囁かれた。

こんなん泣くでしょ。私でも泣く。

恐怖で凍りついたまま悲鳴だか泣き声だかわからん声を上げ続ける0歳と、それに慌てる私。今更「ママダヨー!」と高い声を上げるも逆効果。0歳はぎゃんぎゃん泣く。「顔の白い女がママの声真似するー!!」みたいな泣き方をする。それはそう。私でもそう思う。

収集がつかなくなったのでもうパックを取捨てた。顔を見せると困惑しながら0歳はさらに泣く。白い顔からぬるぬるの母親の顔が出てきてるからな。エイリアンの体を割いて母親が産まれたように見えたのかもしれない。

顔に美容液を塗りたくったが、我慢できずに染みる目を水で洗った。シャワーをジャーっと当てたのでなんか顔の中心の美容液は無かったことになったと思う。タオルで顔をゴシゴシ拭いて、ギャン泣きする0歳を抱えあげ、私の今年の目標は一歩めからすっ転んだ。

義母さん、スキンケアって大変ですね。ただ肌を労りたかったのに、目に美容液を突っ込んで子供にホラーを仕掛けてしまいました。不思議。

 

その後はドアを確認することで、なんとか継続できている。パックを掴む手も慣れてきた。最初の頃よりもたもたしないでつけれている、はずです。

よく知らなかったことをはじめると、予期しないことがあって面白いなあと思っていたけれど、こうして書くとあれですね。私が余計な閃きを実行しなければ避けれたことですね。

あと説明書をちゃんと読めばもっとスムーズにいけましたね。

 

はじめの一歩は説明書から。

お肌モチモチを目指して頑張るぞー!