カイロ・レンが好きすぎて喋る

スターウォーズ最新作「スカイウォーカーの夜明け」を観てきました。
私はスターウォーズシリーズを全部観ましたが、観ただけで調べてないし大のスターウォーズファンでもありません。でもシリーズ全編通してとても満足したし楽しかったし何よりカイロ・レンが凄く好きになったのでお喋りします。

ここから先はネタバレをしまくるので見たくない人は注意してください。











はじめにSTAR WARSシリーズについて軽く触れよう。
STAR WARSの作品は全9作品、3部作を1章として全3章の闇の帝国シスとそれに抗うジェダイの騎士&民間反乱軍を描いた壮大な物語である。
発表順はルーク・スカイウォーカージェダイの騎士として覚醒、成長する物語エピソード4~6。
次にルークの父、アナキン・スカイウォーカーの葛藤、苦悩からの物語の始まりを描くエピソード1~3。
最後に、今回終演を迎えたルークの弟子レイが全ての黒幕皇帝パルパティーンをみんなの絆で打ち倒すエピソード7~9。

説明通り、STAR WARSのあらすじは全体を通して真っ当な王道物語だ。だからこそ、面白い。腹黒く捻るとか視聴者を裏切るどんでん返しがあるとか、そういうのは王道あってこそ存在する。
王道無くして邪道は無い。
そして王道物語に観客を引き込ませることにおいて、監督ジョージ・ルーカスは確かな腕を持っている。予想できる結末へまだ見ぬ展開がはらはらドキドキさせながら連れていく、STAR WARSは視聴者が持つ希望を必ず見つけてくれる物語なのだ。


で、私はもともとアナキン・スカイウォーカーが大好きなのである。

過去公開作はもう大分語られ尽くしてるからネタバレするが、エピソード4~6でアナキンはあの有名な悪の指揮官ダース・ベイダーとしてルークの前に立ちはだかる。ダース・ベイダーは皇帝パルパティーンが率いる闇の軍勢シスの特攻隊長というか、パルパティーンの印籠を持つめちゃ強剣豪、星を容赦なく根絶やしにする最凶将軍であり皇帝パルパティーンの右腕というポジションだ。
ルークは激闘の終わりにダース・ベイダーが父アナキンだと知る。つまりルークの戦いを観終わった人は「アナキンが悪のダース・ベイダーになってしまう」ことを知ってて1~3を観るのだ。

約束されし闇堕ち!

なのに、エピソード1の映画に出てきた若きアナキンはとんでもなく良いやつでイケメンで純な青年だった。こんな良い子がどうして…?!
視聴者はぐいぐい引き込まれる。そこには涙なしでは語られない辛い葛藤と苦悩があり、ダース・ベイダーになるのもやむ無し、最後には視聴者もアナキンの人生に涙してしまうという、


光属性闇堕ち大好きマンにはたまらんキャラクターがアナキン・スカイウォーカーなのだ!!!!


息子のルークがその名の通り「真の光」であり、物語の核として存在感を増すほど、アナキンの悲劇と暗い感情が際立つ。ジェダイの使命……あやふやな正義……誓った愛…足掻いても守れない命…けれど微かに息子に繋がる光……うっううっ…映画を見たとき私はバスタオルを握りしめて泣いた。いやまじで。家でDVD視聴だったもので。
(アナキンが闇落ちする過程は是非映画を観ていただきたいがまあ総括すると大体マスターヨーダのせいだと付け加えておく)

そして今回私が「大好き!!!」と沼へ飛び込み前転した新三部作で登場するカイロ・レンだが、彼はなんとこのアナキン・スカイウォーカーの孫なのである。

と、同時にルーク・スカイウォーカーの甥だ。

そう、彼は真の光属性を親族に持つ闇堕ちの血統の末裔なのだ!!!!!!!!


こんな美味しいキャラクター居る?!?大好物です!
エピソード7の初登場時、カイロ・レンは滅びたはずのシスの軍勢の残党である悪の組織「ファースト・オーダー」の幹部として、かつてのダース・ベイダーのごとき真っ黒な衣装と強力な闇の「フォース」(ジェダイの騎士が持つ超能力みたいなやつ。)を纏い街を破壊しに登場する。
ここで「えっ…ダース・ベイダー再び…?!」と思う視聴者は次の瞬間、彼がダース・ベイダーとは違い、癇癪持ちで子供っぽい短気な性格であることに二度びっくりする。
突然「わーーー!!」と叫んで気に入らない部下にめちゃめちゃに当たり散らすのだ。私は爆笑した。そして一気に好きになった。

カイロ・レンの出自は英雄の血統だ。
世界を救ったジェダイの騎士であるルーク・スカイウォーカーが叔父。その妹で銀河帝国のプリンセスである強く美しいレイア姫が母で、ルークと共に世界を救ったハン・ソロが父である。(「カイロ・レン」は偽名で本名は「ベン・ソロ」という)

当然、ジェダイの騎士の血筋であるカイロ・レンはフォースが使える。叔父ルークに師事してジェダイとしての修行をしていたカイロ・レンは、偉大すぎる周囲へのコンプレックスからやがて叔父や父ではなく、祖父アナキン・スカイウォーカーへの憧れにとりつかれ、第二のダース・ベイダーになるべく悪の組織に飛び込んでしまったのだ。

こ の 経 緯 の 隙 の 無 さ !!

わかりますか!この美しさが!!キャラ設定の黄金比!!ビーナス像の如く必然と偶然が産んだ素晴らしい愛されキャラへの背景!!

カイロ・レンのキャラ造形は王道中の王道、輝く偉業を成し遂げた周囲の背景を考えられない子供が安易に選ぶ闇への憧れを出発点にしている。つまり行動力のある厨二病です。このわかりやすさ、それによる共感性の高さはカイロ・レンの魅力のひとつといえる。
誰しもが、子供の頃、憧れに近づけなかったことがあるだろう。立派な大人は最初から立派だったと思っていたことがあるだろう。この息苦しい正しい生活より、アウトローの生き方が輝いて見える時期があった。
ダース・ベイダーは悪のカリスマであった。誰もが畏れたが、同時に誰もが目を離せなかった。カイロ・レンの身近には光とおなじだけ憧れてしまう闇があったのだ。

本当のところ、ルークの戦いは光だけではなかった。迷い、傷つき喪いながら、ジェダイの騎士としてフォースを受け入れ、並々ならぬ修行の末に敵を打ち倒した。だが倒した敵は本当の父だったのだ。求めていた肉親を喪い、多くの戦友を喪い、それでも使命とともに戦ったルークの人生は、それを全て背負ってなおも前を向く強く美しい魂によって成っている。
アナキンの人生もまた闇だけでは無かった。彼はもともと正しいことが何かを知っていた人間だ。けれど裏切られ、傷つけられ、求めて抗った全ては守れずに消えてしまった。彼はそうしたくて闇へ屈した訳ではない。むしろ最後の最後まで、ジェダイとしての運命、光への使命を信じていた。それを折られ続け踏みにじられ、彼は絶望の中パルパティーンの手を取った。
アナキンの死の間際、ルークは実父の人生を赦している。それができる光の魂は、犠牲なしでは輝けない。

しかしそんな壮絶な背景、カイロ・レンにはなーーーんも伝わってないのだ!!!!

カイロ・レンからの視点を想像してみる。
彼にとって叔父は偉大なジェダイの騎士だ。母は帝国を率いる姫である。越える背中は遠すぎるし、尊敬はしてもしてもきっとしたりない。周囲は「あのルークの」と言うだろうし、なにかあれば「レイアの子なのに」というだろう。カイロ・レンは元々暴力に憧れるふしがあった。彼はジェダイの騎士になりたかった。伝説の英雄だ、素晴らしい手本が側にいる、しかも自分にも力がある!力に憧れる彼がジェダイに憧れるのも当然であろう。
しかし彼にはひとつ引っ掛かることがある。父はジェダイの騎士では無いのだ。
父のハン・ソロは密輸をしていた無法者である。ルークやレイアと違って「貴い血筋」では無いのだ。さらにフォースを使えない只人である。僕ができることが父さんには出来ない。それに気づいたとき、カイロ・レンはどう思っただろう。
いくら頑張ってもルークのようにフォースを使えない。
それを考えたとき、カイロ・レンの頭に父の姿は無かっただろうか。

ジェダイの騎士が使える「フォース」は力そのものである。生命の流れ、気の流れを読み操り自分のものとして獲得する。聖なるものではない。この世を流れる「力」なのだ。当然、清濁混在するもの。
フォースを操ろうとするジェダイは必ず「力の暗黒面」を見てしまう。強すぎる力は大体悪い夢を見せるからだ。ジェダイの騎士は皆この暗黒面を乗り越えてフォースを正しい道で使おうとするのだ。
だがカイロ・レンはこの暗黒面に惹かれた。気付いたルークが止めようとしたが、彼は自分から暗黒面に飛び込んだ。

祖父の影を追ったのである。

ただし幻だ。
カイロ・レンが追いかけるダース・ベイダーの幻というカリスマは、決してブレない真の闇堕ち騎士なのである。たかが闇墜ちに惹かれた子供がたどり着けるところにカリスマは存在しない。彼は暗黒面に飛び込んだ先でも捕らえられない背中を追い続けることになってしまった。

それ故、カイロ・レンは登場時から部下や他の同僚からの人望がまるで無い。
あからさまにため息つかれたり視線を逸らされたりしている。カイロ・レンファンの私は「レンちゃんかゎぃそぉ…」となる一方で「いやあんな癇癪で喚き散らす上司や同僚嫌だわ」と頷いた。カイロ・レンはフォースが使えるという一点のみで部隊を与えられたのであるからやっかみも当然なのだが、それを差し引いても嫌われているのはやっぱり性格がアレなんだな、と思い、さらに好きになった。性格が子供の男は大好きである。(ただしフィクションに限る)

個人的なカイロ・レンの魅力のひとつが、なんとか憧れの祖父アナキンに近づこうとしてどうしても闇墜ちしきれないところである。
性格の根底に善というか、弱いところが芯としてあるようにみえた。要するに弱さが尊いキャラなのだ。だから悪いことをしようと思っても半端になる。暴力は癇癪になるし、命令はわがままになり、強い言葉は捨て台詞になってしまうのだ。幻のダース・ベイダーに届かない苛苛をもて余すカイロ・レン。そこに主人公が現れる。

主人公はレイという女性である。
出自は謎に満ちていたがフォースが使えるためにルークから教えを受け、レジスタンスとしてレイアが指揮する部隊で活躍する。

これを知ったときのカイロ・レンの感情たるや!!
レイが居る場所はカイロ・レンが悪の軍団に飛び込まず光のフォースを使っていたとしたら自分が居たかもしれない場所だ。よき友人と受け継ぐ使命を得て、さらに伝説のジェダイから教えを請える。
そしてさらに、ここがカイロ・レンにとって重要かもしれないのだが、レイはレイアとハン・ソロに期待をされている。
カイロ・レンの実母と実父に期待をされている!!!

あああーーー!!!
こんな辛いことってある?!
憧れた祖父の幻影を追って父母に背を向け、しかし成果は出せず祖父に近づくこともできない!弱気になるときもあっただろうに、振り返れば自分が戻る場所には自分より優秀なレイがいるのだ。身悶えするよね!この設定!!闇落ちに足を踏み出した少年はもうすでに帰る場所を失っているのだ!!

もちろん、父ハン・ソロも母レイアも、カイロ・レンを見放したわけではない。むしろ心配し、ずっと心の中に彼を置いている。ただレイアはレジスタンス総指揮という立場の重さをわかっていたし、ハン・ソロは過去の経験から敵側に回ってしまった息子を手放しで心配するわけにはいかなかった。

だがその辺の機微を感じ取れるほど大人なら、カイロ・レンは祖父の幻影を追って軽率に闇落ちなんかしとらんのだ!!
カイロ・レンは追い詰められた!自分と同じ(もしかしたら自分より優秀な)フォースを使うジェダイの騎士が、自分が派遣した軍隊を次々に撃破している!プライドが傷つき自信も砕けかける!憧れの祖父はまだ遠い!
そんな彼の前に父ハン・ソロがやってくる。
帰ろう。そう言う父はジェダイではない。自分に力を与えてくれる存在ではないのだ!そもそも父がジェダイであったなら!密輸業者などという姑息な人間でなかったなら!自分をもっと見てくれていたなら!期待してくれたなら!

混乱極まる中、カイロ・レンは父をその手で殺してしまう。
彼はその衝撃を真の闇落ちの足掛かりにしたようだが、見ていた観客はああーーとおもうだろう。アナキンには遠いのだ。彼は父を殺したことを悔やんでいる。だから決して真に闇落ちは出来ないんだろうなあという、予感がある。

このぞくぞく感!!
物語は佳境を迎え、レイとカイロ・レンはフォースを通じて互いの憎悪憐み嫉妬愛情を交わし会う。そうして、レイの祖父が悪の皇帝パルパティーンであることを互いに知る!

あー!!対になっている!!!

家族が居ない天涯孤独のさみしさをもつレイ!
家族に恵まれすぎてコンプレックスを抱えたレン!
光のフォースを得た悪の皇帝の孫!
闇のフォースに惹かれ得た聖ジェダイの甥!

こんな二人がであって化学反応を起こさないわけがあるか?!
いやない!!!!!(反語)

カイロ・レンは悪の覇道を進もうと、レイを引き込んで皇帝パルパティーンを討ち、レイとふたりで悪の皇帝に君臨しようとする。対してレイは突然知った出自に動揺しながらも、自分自身を見失わずカイロ・レンを拒絶します。二人の争いは激化。目を見張る戦闘の最中、カイロ・レンは母レイアが命をおとしたことを知り放心。隙をついて勝ったレイは「カイロ・レンではなくベン・ソロと手を取りたかった」と言い残し戦場へ去っていく。

つ。つ、つ、つらぁー)!!!!!!!

息子を心配しつづけていた母の死により、カイロ・レンがその手を止めることも、唯一対等に会話(戦闘)していたレイが彼の闇落ちを認めなかったことも、もうすべてが美しく辛い。
闇落ちしきれないキャラの王道。素晴らしいキャラ描写。

彼が自分で考えて憧れて無理してやって来たすべてが、ここで無に帰す訳だ。
いいや、無に返るだけならともかく、殺してきた数が多すぎる。彼が膝をつき母を想い涙を落とした足元には無数の死体があるはずだ。その重さをレイは突きつけて去っていった。カイロ・レンに価値はない。
でもベン・ソロには?

放心するカイロ・レンの前に失くなった父の記憶が微笑む。
「どんなに変わっても俺のベンのままだ」
瞬きの間に消える父は幻想か。カイロ・レンはようやく幻影を絶ち、ベン・ソロとして顔をあげるのだ。

泣ける〜〜〜〜〜〜〜!!!!

この展開!あーーーーー!!!!美しいーーーー!!!ずっと迷子だった幼いカイロ・レンが原点に立ち返りベン・ソロになる瞬間の美しさ!!!はあ〜〜〜〜〜〜〜!!!!たまんねえ〜〜〜〜!!!

カイロ・レン、いやベンはそのままレイを助けに走る!かつての部下を容赦なく殺し!斬り!
(わたしはかつての直属部下がベンを取り囲むシーンがもう大大大すき。本当に人望がなかったんだなあということが痛感できて良い)
レイと背中合わせで戦い、最後には皇帝パルパティーンを打ち倒すのだ!!
しかし、レイは戦いの傷が深く命をおとしかける。駆け寄ったベンはその傷を癒すため、自身の命をレイに分け与えそして…………ベン・ソロはそのまま息絶えてしまうのだ。


あーーーー!!!!!!!!美しいーーーー!!!


闇落ちした結果の責任をきちんと果たし、死んでいくカイロ・レン(ベン・ソロ)。この美しい幕引きに「やっぱり闇落ちしたキャラは死にかたが美しくないとなぁ!!!」と私の中の性癖が拍手喝采のち号泣した。よき。よき散り様であった。

はじまりは幼稚か憧れだった。
それがいつしかプライドになり、戻る場所は遠くなり、喪ったものに気づいたときには壊したものが大きすぎた。
彼が命を投げ出すのはレイのためじゃない。彼自身の犯した罪のためだ。
光属性闇落ちキャラとしてこれ以上無い美しい人生じゃないか!!

今作のスター・ウォーズではレイがよく「お前は何者か」と問われるシーンが多い。作品を通してのテーマのひとつなのだろう。
カイロ・レンは幻を追いかけて誤った道を歩きながら、最後には「お前は何者か」の応えにたどり着いた。たとえそこが死だとしても、死を選んだことに彼の人生には意味があったと私は思うのだ。
死ぬことが良いのではない。何かを為そうと足掻いたことが良かった。

アナキン・スカイウォーカーも、為そうと足掻いた結果ダース・ベイダーへ堕ちていった。ベンは最後の最後に憧れのアナキンへ触れることができた。
幻影ではなく本物の祖父へ近づけたのだ。それにベンが気づいているかどうかはともかく、観ていた私はそう感じ、その構図の美しさに嗚咽が漏れた。3つとなりの家族連れに「あのひとないてるー」って囁かれるくらい響いてしまった。

カイロ・レンという「光属性ゆえに闇落ちしきれない闇落ちキャラ」の魅力が伝わっただろうか。今作は色々と賛否両論の出た作品だという噂を聞く。私も映画自体の構成や、レイとカイロ・レンに恋愛感情は無いだろ!!みたいな不満はあるが、ひとまず、カイロ・レンというキャラクターの美しさは一貫して素晴らしかった。
まだ観てないひとはこのネタバレ部分を読んでないかもしれないが、もしまだ観てないひとはぜひ観てほしい。
できれば全シリーズ観てほしい。
そしてアナキンとカイロ・レンという美しい闇落ち王道の沼にはまってほしい。

光属性闇落ちキャラは………いいぞ!!!!