ぐんにゃあ

ゴールデンカムイを読んでいた。鯉登音之進が好きだ。薩摩出身の若い陸軍少尉である。太陽属性の上司大好き人間で、上司から褒められると歓喜のあまり体がぐんにゃあと仰け反って倒れる。何を言ってるかわからない人は是非漫画を読んでください。

ところで、この「ぐんにゃあと体を仰け反らせて地面に仰向けに倒れる」様子に既視感があった。うちの次女(1歳児)だ。

自我が出てきた次女は、要求が通らないと途端にムスッと目をつむり体の力を抜いてぐんにゃあとその場に仰向けに倒れ込む抗議方法を使う。最初見たときあまりにも急にぐでっと倒れるのでなにかの発作かと思ったくらい、スイッチが入るとぐんにゃあと突然倒れる。例えばこんな感じだ。

 

「たいたい!(おかわりをくれ」

「え、もうおかわりないよ。食べちゃったでしょ」

「!(ぐんにゃあ)」

 

「あー!(このクレヨンいいかんじです」

「そのクレヨンおねえちゃんが使いたいって言ってたよ。とってきちゃったの?」

「!(ぐんにゃあ)」

 

「だっだーいぇー!(でかけるんですか!私も行きます」

「次女はママと留守番だよ」

「!(ぐんにゃあ)」

 

「あ、次女、寝る時間」

「!(ぐんにゃあ)」

 

眉間にシワを寄せて目をつぶって倒れる1歳児。なんじゃこの抗議は…。

 

子供を二人産んではじめて知ったのだが、性格ってのはやっぱり子供によるし、わりと生まれた直後から違うらしい。長女は1歳くらいから抗議のときにはギャーン!となにかを言い返していた。覚えたての「だいこん!にんじん!」という言葉を強く言い返すことで私の言うなりにならないと示してきたのは2歳くらいのときだ。で、今も口が回るので言い合いになる。このあいだなぞ「たくさん食べるとママみたいに太るからごはんを食べたくない」と言い出すので「ママは昔、今の長女ちゃんのようにお菓子ばかり食べていたのでこうなりました。つまりごはんをちゃんと食べないとこうなるぞ!!!」と言い返してなんとかご飯を食べさせたのである。試合には勝ったが、言いながら自分のデブさに打ちのめされたので勝負には負けた。とにかく、口の回る長女は1歳から抗議に口を使っていたのだ。

 

対して次女は「ぐんにゃあ」である。ムッと黙ってこちらを睨みつけるのがレベル1、通用しないとわかると仰向けに寝て土地を占拠(80センチ四方)する体全体を使った抗議である。どこで覚えた?

実はスーパーでも保育園でも「いやだ」と思ったら仰向けに寝るので困った。今は片手で持ち運べるサイズなので、ひょいと抱えあげて泣き喚くのをハイハイと宥めながら撤収できる。だがこれが5歳になったら? 根比べになるだろう。スーパーのど真ん中で仰向け抗議する子供とそれを鬼の形相で見下ろして無言の圧をかける私。もう想像できる。できれば外れてほしい予想である。

とはいえ、家の中でやる分には笑えるので、私はぐんにゃあされるとしばらく眺めることにしている

しばらく眺めていると、ちらっと薄目を開けてこちらを確認してくる。私が黙ってみていると、また目をぎゅっと瞑ってムッとした顔をする。隣でじっと見ているとそのうち笑い出すので、それでおしまいだ。まだまだ気分がコロコロ変わる年齢なので、抗議もながく続かない。しばらくぐねぐねと地面で遊んでいるが、「絵本読む人」と声をかけると笑顔で飛んでくる。将来のスーパーでもそのくらいのチョロさでいてくれ。本当に頼む。

 

次女の性格と長女の性格を眺めていると、人間の性格ってやっぱある程度生まれた時から方向性あるんだわ、とつくづく思う。私なんかにコントロールができるはずもない。せいぜいが、家族の中でお互いの許容範囲を擦り合わせて笑って暮らすことに務めるだけだ。

それにしたって、フォークを落としただけでとつぜん「ぐんにゃあ」されると流石に「ご自分で落とされたんでしょう…?」と呆れるしかできない。音之進くんはやっぱり子供の時からぐんにゃあしてたんだろうか。音之進くんのお母さんは是非育児日記を書いてほしい。ぐんにゃあ女児の参考にしたい。